『鍼灸師・借金0開業のしくみ② 往鍼バカ一代 』
前回、ブログを読んだ妻から
『偉そうに何様のつもりよ! もっと謙虚に書けんのか!!』と叱られました。
真摯に受け止め反省しつつ、更に分かりやすく説明できるよう頑張ります!
鍼灸師の方向けに初めて書いた前回のブログは、全国の先生方から数多くのリアクションを頂き、嬉しかったです。
駄文にお付き合い頂いた方、本当にありがとうございました。
妻と同様、気を悪くした方もいらっしゃったかもしれませんが、根はいい奴なのでご容赦下さい。
『浜松に理屈っぽいなんか変な奴がいるぞ。』ぐらいに頭の片隅にでも置いて下されば幸いです。
今回は、往鍼のデメリットについてお話します。
デメリットを克服すべく、足りない脳みそに汗をかきつつ考えた実際のオペレーションもできる限り紹介していきます。
改善継続中のものもあります。ご了承下さい。
往鍼のデメリット
目次
①移動時間:宿命、永遠のテーマ。
②夏暑く冬寒い:AMENIMOMAKEZ
③商品は自分のみ:人は石垣、人は城。
①移動時間
自費往鍼の大きなデメリットは移動時間です。
移動時間短縮は運営上、重要事項です。
移動時間をできる限り短縮し、施術時間を店舗時代より長く確保するよう心掛けています。
※ちなみに私の場合、施術時間は一応目安45分と定めています。
ご高齢の方でこの施術時間が負担になる場合は短くしますし、症状、状態により45分を超える場合も多くあります。
その辺はマイペースに運営しています。
移動目標の10分を合わせると1時間に一件の移動&施術が終わります。
ですので仮に8時間往鍼すれば、一日8名、25営業日であれば、目安50万程の売り上げです。
僕の場合、一日の労働時間は、8時間~10時間といったところです。
施術時間が短くても患者様が満足される効果を提供できる施術者は十分に短縮可能だと思います。
狭いエリアに特化するとそのエリアを繰り返し移動しますので、徐々に効率的な道順を覚えます。
道を覚える事が大の苦手でしたが、毎日行ったり来たりしているとさすがに詳しくなります。
この二年で知らなかった道を大分覚えましたのでその分、時間に余裕ができました。
その面でもエリア特化は大切です。
患者様にはルート効率化の為、時間変更をお願いしています。
ルート調整が患者様の施術時間を確保する為に大切な旨は、丁寧に伝えるべきだと思います。
『私はできるだけ十分に時間をかけて施術したいと考えています。ルートを調節する事により、移動時間が大幅に短縮される場合がございます。その場合、予約時間の変更をご相談させて頂きます。もしご都合に差支えがない場合はご協力下さい。但し、難しい場合はご遠慮なくお伝え下さいね。』とカウンセリングや施術中随時、お伝えしています。
ルート調整にご協力頂いた患者様には、施術時間をちょっぴりサービスしたり、ささやかなプレゼント(パイオネックス、お灸の試供品や洗えるマスクなど)をしています。そうする事で変更依頼がしやすくなります。
また、不定期に発行しているニュースレターにもその旨を文章化して記載しています。
ニュースレターは、時期に合わせた健康トピックスを中心にプライベートでの出来事などを載せています。合わせて、患者へのお願いを掲載しています。例えば、紹介依頼であるとか、おすすめの曜日時間(=稼働率が低い)であったりとかです。
公私ともお世話になっている飲食店さんを紹介するのもコミュニティづくりとして有効です。
※ローテクニュースレターですがファイリングして下さったり、PCに落としてご家族に送信して下さる患者様もいらっしゃいます。
施術から遠ざかってしまった患者様やご卒業された患者様には往鍼で近くまでいった際、ポストに投函していました。
するとlineを頂き往鍼を再開する事も何回かありました。
ニュースレターは往鍼をご利用頂いた方と間接的接触を図る良いツールだと思います。
但し、コロナウィルスの影響もあり、紙面でのニュースレターは現状中止しています。
話が反れました。移動時間短縮に話を戻します。
移動時間短縮には移動手段が大きく関わります。
僕は浜松市という地方都市(※一応政令指定都市ですが)の更に郊外である浜松南部を中心に往鍼しています。
地域的にマンション、アパートなどの集合住宅よりも戸建てのお家が多いエリアです。
大体、駐車場に余裕があるお家が多い為、車で施術場所の至近まで伺う事ができます。
但し、都市部では事情が異なると思います。
僕も浜松駅周辺の往診でパーキングを利用してお伺いするケースがあります。
パーキングを利用する場合、駐車料金を別途頂いていますが、パーキングから施術場所までベッドを携えて移動する距離が遠く大変です。
特に立体駐車場では車を駐車する時間、出車する時間も案外かかりますので、計算した方が良いと思います。
こうした移動は連続すると結構大変です。特に夏場は一発で汗びっしょりになります。
また、雨天では、ベッドが濡れてしまうので、ベッドを拭きあげる作業も加わります。
土砂降りの時は、車で至近まで着け、ベッドを下ろしてパーキングに止めるのでその分余計に時間がかかります。
大汗をかいたり、雨に濡れると着替えなければなりません。
都市部で往鍼する方は大変だと思います。
僕は5㎞まで500円、5㎞以上1000円と距離により交通費を定めていますが、都市部の方は移動時間を踏まえ、交通費の設定を一考する必要があります。
また、電車+徒歩で訪問される方や自転車、バイクで往鍼される方もいらっしゃると思います。
車以外で移動される方が悩まされるのは荷物の運搬ではないでしょうか?
はりセットは軽量ですが、着替え、タオル、予約ファイル、タブレット、財布、おつりセット、携帯、領収書、消毒スプレー、洗顔シート、物販グッズ、雨具などをバックに入れるとなかなかの重量になってしまいます。
なにより、僕のような未熟な施術者ですと、治療用ベッドを用いず施術するとかなり質が下がってしまいます。
腰痛、膝痛も心配です。
ベッドなしでは、施術のクオリティーを保てる自信がありません。
ですので労力はかかりますが、
僕の場合、必ずベッドを持って行くよう決めています。
ベッドを運べない環境下では、健康保険を用いた鍼灸施術を導入するなど患者様の経済的負担を減らす配慮が大切だと思います。
今回、ブログを書くことで往鍼事業を論理的に見つめなおす作業も兼ねています。
僕は、長年生活している浜松市の交通事情を想定し、事業計画を立てています。
改めて痛感したのは、浜松市が往鍼事業にとても適した環境であるという事です。
①浜松郊外は戸建て住宅が多く、複数台駐車できる駐車場をお持ちの患者様が多い。
②交通渋滞は朝9時と午後5時~7時だけ。
→この時間は渋滞の影響がない自宅から近いエリアだけお伺いするようにしています。
③公共交通機関が発達していない為、車の運転ができない方は医療機関への通院が不便。
→往診へのニーズが強い。
上記の理由から、僕の往鍼スタイルでは郊外の方が運営しやすいように思います。
エリアの交通事情に合わせた往診のしくみをつくる事が大切だと思います。
僕が自費往鍼事業を始めるにあたり、繰り返し繰り返し読んで勉強した書籍を紹介します。
仕組みづくりの上で本当に参考になります。
小倉昌男著『経営学』です。
ヤマト運輸にて『クロネコヤマトの宅急便』を世に送り出した故小倉昌男会長、不朽の名著です。
部分読みを含めると100回以上は読んでます。
ある意味、【読む精神安定剤】といえるかもしれません。
このブログの一万倍、ためになるので往鍼事業を計画している方は是非、ご一読下さい。
※ビジネス書金字塔
往鍼事業を志すにあたり感銘を受けた一節を引用させて頂きます。
『はじめはネットワークを作るのに、コストがかかるし、利用度が低いうちは収入も少ないから必ず赤字になる。しかしネットワークができ、利用度が高まって収入が増えれば、損益分岐点を超え、利益が出るはずである。宅配の事業は効率が悪いから絶対に儲からない、とは限らない。ネットワークの損益分岐点を越さない限り、たしかに利益は出ないが、ネットワークの上を荷物がどんどん流れれば必ず損益分岐点を超え、利益が出るという性質のものだ。』
『経営学』小倉昌男著 第4章『個人宅配市場へのアプローチ』P86より引用
天下の名経営者に影響を受けたというと甚だ身の程知らずですが、エリアを徹底管理した運営を行えば、往鍼事業は、患者様にも施術者にも大きな恩恵をもたらすと確信できました。
続いては往鍼の数少ないランニングコストであるガソリン代についてお話します。
当然ですが、ガソリン代は往鍼車の燃費性能とガソリン価格によるところ大きいと思います。
残念ながら我が『往鍼車アイちゃん』は軽自動車としては燃費が悪い部類です。
毎週2000円ずつ給油しています。
2020年6月現在リッター110円台後半ですので、大体月10000円で収まります。。
梅雨や夏場はエアコンを使用しますので、月15000円くらいはかかります。
走行距離は、開業2年で約27000㎞ですので年間13000㎞です。
自宅から店舗へ通勤するにしてもちょっと離れていれば、これぐらいはかかるかなと思います。
ちなみに往鍼車は中古価格が安い、見た目がいい人っぽい、色は白またはシルバーという条件で探した結果、三菱アイに決定しました。
一般住宅への往鍼では、場所が分かりにくい為、ナビは必須だと思います。
僕の場合は駐車位置を確認する際、他に停まっている車種、カラーも合わせてお伺いし、目印にしています。目印がない場合は、到着次第、電話して戸外に出てきて頂きます。
移動時間を短縮する為に、第一回でもお伝えしたように交通費の設定も工夫しています。
第一回をご参照下さい。
②夏暑く、冬寒い。
当然ですが、気候の影響をモロに受けます。
年間通じて空調管理している治療院業務と大分違います。
住宅環境によってはエアコンがない部屋で施術を行う場合があります。
エアコンがある部屋はテーブル等があり、ベッドを設置できないとか。
僕の場合、『クーラー病にならない為のリハビリだぜ!』と強がりつつ、大汗かきかき頑張っています。
前回のブログにも書きましたが、自宅を中心に5㎞の範囲で集中して往診しているのは、大汗をかいた際、帰宅しシャワーを浴びる為でもあります。
治療院業務に比べ、帰宅後のビールが格別に旨い事が嬉しいです。
また、屋外はメチャメチャ暑く、施術部屋はガンガンエアコンが効いている温度差がある環境も厄介です。夏場、車のエアコンは、移動距離が短い場合、なかなか効いてくれません。これを一日複数回繰り返すと体調を崩しやすくなります。
夏場は特に休憩と睡眠、栄養をたっぷり摂るようにしています。
車で往鍼する場合は、冬の寒い時期はフリースなどを着込めばしのげるのですが、夏は防ぎようがありません。
速乾性が高く涼しい素材のユニフォームを年中着用しています。
本心では、フレッドペリーのポロシャツが良かったのですが、ペン、メモ帳を入れる胸ポケットがないので泣く泣く諦めました。
キャンペーン期間は、ネーム入れ無料となり安いので紹介しておきます。
ネーム込み1000円程度だったと思います。
【フードユニフォーム:ドライポロシャツ】 興味がある方は、ネットで検索してみて下さい。
※シャーペン、赤ペン、ボールペンはCROSSで揃えてます。
バックに制汗スプレー、往鍼車に汗拭きシート、着替え、タオルは常備しています。
靴下の替えも入れています。突然の雨で靴下がビショビショになる場合もあるからです。
猛暑日はアイスノンを保冷バックに入れ車に積んでおきます。
移動時、首に巻いたり、顔や頭を冷やします。
余談ですが、僕の場合、コアなジャマイカミュージックファンなので、スカ&レゲエのCDを50枚程積んでいます。BGMで大好きな音楽をかける事で気持ち良く夏を楽しめます。
ちなみに往鍼では、ポケットが多いユニフォームが便利です。
治療院時代はディッキーズのワークチノを履いていましたが、現在はワークマンで販売している寅壱のカーゴパンツを愛用しています。
現在、毎回検温(患者様術者共)手指、ベッド、バストマット、枕の消毒をしています。
ですので、右のカーゴポケットには、非接触型体温計、左のカーゴポケットにはアルコールスプレーを収納しています。
値段も手ごろで機能的かつ丈夫、動きやすくシルエットも綺麗です。とても気に入っていますが現場感がかなり強くなります。
※実際にポケットに収納しているのは、小さな消毒スプレーです。
夏場以外はフィッシングベストにディスポ鍼&アル綿とゴミ袋を収納し施術していました。
ちなみに鍼で出た医療廃棄物を一旦捨てるのは、ダイソーの小さなレジ袋です。
鍼セットを用意する時間が短縮できます。
カーゴパンツにフィッシングベストを合わせると【本気の現場人】となりますので、キャラを選びます。
※きたないおっさんの写真ばかりでホント、スミマセン。
ユニフォームは施術者のセンス、嗜好で選べば良いと思います。自己責任ですので遊び心があって良いと思います。
また、コロナ前は、予約が空いた時間は近くの温泉によく行っていました。
公共の入浴施設は料金も安い為、往鍼の休憩に最適です。
汗も流せるし、ストレッチ、昼寝もできます。
自宅に変わるエリア拠点とする事もできます。
自宅まわりで集客が思わしくない場合は入浴施設を拠点としてポスティングする予定でした。
再入場割引がある施設が良いですね。
マスクは施術時必ず着用しています。水着素材の涼しいマスクを使っています。
また、マスクにはハッカオイルをスプレーし、暑さ対策をしています。
ちなみに往鍼車の中に目立たぬようマスクを干し消毒できるようにしています。
夏場、治療院業務から往診へ移行される方は、暑さに身体を慣らせる期間が必要だと思います。
自身のコンデションを整えないと、良い施術はできません。
くれぐれも体調管理に留意して下さい。
※往鍼に慣れ始め、緩みつつある自分への戒めでもあります。
③商品は自分のみ。
あくまでも商品は、施術者です。
挨拶、問診、検査、カウンセリング、手技、はり、運動指導、生活指導、クロージング・・・。
仮に往診で物理療法機器を導入したとしても効果や計画、費用を説明したり実施するのは施術者自身です。
店舗であれば看板、店構え、設備、インテリア、掲示物などで問診前に患者様へ良い印象を与え、実際のサービスに入る事ができます。
また複数スタッフが在籍する治療院であれば、受付、問診、手技、はり、クロージング、会計とパートごとチームプレイで患者様に対応する事ができます。チェーン展開している規模の大きいグループに所属している場合は、自覚していなくても少なからずその恩恵を受けています。
僕の経験ではこのスケールメリットを自分の力だと錯覚してしまう人は開業後苦戦します。
運営の論理がどうしても甘くなります。
往鍼では、サービスをすべて一人で提供します。
術者の応対、説明力、施術、人柄が商品です。
戦略としては、実際に患者様にお会いする前に良い印象を与える事はできます。
僕が行ったのは、お会いする前に自分のストーリーを先にお伝えすることでした。
チラシ、ブログで料金やサービス内容に加えてストーリーを発信するようにしました。
そのストーリーとは、
『接骨院グループで長年管理職を務めた鍼灸師が、母の闘病、他界をきっかけに、周囲の大反対を押し切り往鍼専門での起業を決意する。真心込めた施術を良心的な価格で提供できるよう日々奮闘している。』というものです。
このストーリーを開業チラシ、ブログに記載しました。
読んで下さった患者様からは
『あなたなら間違いないと思った。お母さんはつらかったねぇ。』
『温かい人柄が出てると思って、電話した。』
というありがたいお言葉を頂きました。
ちなみにこのブログの自己紹介編でも僕のストーリーを載せています。
この章を読み終えた後、更に下にスクロール頂くとすぐ出てきます。
読んで下さった方に、僕の感じが伝わればいいなと思いのっけてます。
ストーリーは、とても大切ですので、別の機会を設けて集中的にお話したいと思います。
資格を取得してすぐに開業を志す方もいらっしゃると思います。
往鍼専門であれば、大きな借金を抱える事はありませんし、まずチャレンジする事は素晴らしいと思います。
但し、養う家族がいらっしゃる方は慎重に考えて下さい。
『私の腰痛、治りますか?』
『痛みなく歩けるようになりますか?』
『めまいはいつ治りますか?』
最低でも患者様からの不意な質問に、自分の経験を踏まえ、真正面から自信をもって答えられるようになるまで開業すべきではないと思います。
まず論理的に症状、期間、頻度を含めた施術計画を説明できなければ、到底患者様からの信頼は得られません。
文献やブログを読んだり、勉強会に参加したりする事で方法論を学んだり、知識を深める事はできます。
しかし、本当の核となる部分は自分が患者様と向かい合い懸命に施術する中でしか養えないと思えます。
勤務されている方は、日々患者様に自己ベストの施術&応対を提供できるよう頑張って下さい。
毎日、自己ベストを積み重ねる事でいつのまにか大きく成長します。
目の前の患者様の為に、全力を尽くせなければ、どんな勉強をしてもなんの意味もありません。
患者様に最善の施術を提供した時間が開業後、自分を支える貴重な礎になります。
店舗、往鍼関係なく、共通する原理です。
そして、勤務中に患者様から信頼を得ている先輩スタッフの挨拶、表情、言葉、施術、考え方を吸収して下さい。
模倣する事が近道です。
開業すれば、現場でモデリングする事ができなくなります。勤務されている方の特権です。
できれば、店舗責任者を務めてから開業される方が良いと僕は思います。
僕は運に恵まれ、アルバイト学生、鍼灸師、副院長、院長、総院長、取締役と一通りの役割を経験する事ができました。
立場により見えてくるものが変わります。
視野が広い事は、開業時、大きなアドバンテージになります。
往鍼専門での開業は、いつでもできます。
だからこそ、これなら勝負できる!という確信が得られるまでは、自分を高める事に集中して頂きたいと思います。
駄文長文にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
ご質問やご希望のテーマがございましたら、お気軽にお伝え下さい。
メッセージ、コメントで頂ければ対応させて頂きます。
次回は『鍼灸師・借金0開業のしくみ③ 大切なお金のはなし』を予定しています。
【往鍼バカ一代】どうぞよろしくお願い致します。
See Ya!